とあるレンジャーの休日

 歩は慌てて身を翻し、畳の上を転がって距離を取り、素早く立ち上がった。
 殺気立つ男に怪訝な顔を向け、「なんなの? あんたもやるの?」と問いかける。

 彼は噛み付きそうな目をして歩を睨み、こう問い返してきた。

「お前……紫乃ちゃんと、どういう関係だ?」

「は? 紫乃?」

「気安く呼び捨てにするな!」

 歩は、彼がいきなり怒り出した理由を把握して、ふうと息を吐いた。

「んー、紫乃と俺は、身体を見せる約束をした仲、かな」

 半分からかい口調で答えると、男の目つきが変わり、彼が本気で怒り出したことが分かった。

(あ、やべ……)

 冗談を本気にされ、歩は内心焦りつつ、吾郎の表情を窺う。
 だが吾郎はむしろ愉しげに笑いながら二人を無視し、壁際で待たされっぱなしの子どもたちに向かって言った。

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