とあるレンジャーの休日
眠れない夜
05
紫乃が20時過ぎに自宅へ戻ると、居間には誰も居なかった。
当然気になったのは歩の行方だ。
2階に上がり、彼の部屋の前で声をかけてみるも、返事も、彼がそこにいる気配もなかった。
一階に戻って、居間の奥にある清二郎の部屋をノックする。
中から顔を出した清二郎は、紫乃が口を開く前に道場の方向を指さして言った。
「歩なら、あっちだ。吾郎も戻ってこない。大方、捕まって一緒に遊んどるんだろう」
紫乃は、清二郎の表情から、彼が歩の存在を好意的に受け止めていることを感じ、安堵した。
「歩、病み上がりなのになぁ」
そう呟いたら、清二郎が軽く眉をひそめる。
「なんだ。坊主は病気か?」
「坊主って。ああ見えて彼、27だよ、おじいちゃん」
だが清二郎は、紫乃の言葉を気にする様子なく答えた。
「若造に変わりない。飯はしっかり食ってたぞ」
「そう。ありがとう」
紫乃は礼を言って、道場の方に足を向けた。