とあるレンジャーの休日
そこまで考えて、紫乃はハッとした。
歩は今、極度の寝不足状態だ。
夕飯がいつも通りなら18時前。
今は20時半だ。
その間ずっと道場にいたとしたら――
「ちょっと待ったーっ!」
紫乃は声を張り上げ、横開きの扉をバンッと開く。
そこにいた全員が何事かと目を丸くし、彼女の方を見た。
「紫乃ちゃん!」
宗春が嬉しそうな顔で名前を呼ぶ。
でも紫乃はそれには応えず、真っ直ぐ歩の所へ行くと、「このバカ!」と怒鳴った。
「あんたは……今日医務室で点滴入れたこと、もう忘れたのか!」
「紫乃……でもさ」
「でもじゃない! ロクに寝てない奴がいっちょ前に暴れてんじゃないよ。ぶっ倒れたらもっと迷惑かかるでしょーがっ」
紫乃の迫力に、宗春をはじめ、吾郎までが呆気に取られていた。
ただ一人、歩だけが子どもみたいにふくれっ面をしている。