とあるレンジャーの休日

「あの、さ」

「ん?」

 紫乃が振り返ると、歩は何かを言おうとして思いとどまり、ニコッと笑った。

「ありがとう」

「うん……? どういたしまして」

 紫乃は首を傾げながら階段を上ると、廊下の一番先にある自分の部屋に入った。





 清二郎曰く、食事はしっかり取れていたと言う。
 そして道場では過剰とも言える運動をし、お風呂にも入った。
 隊舎とは環境も変わり、さすがに今夜は、歩もグッスリ眠れるんじゃないだろうか――

 父の吾郎は、教室が終わって母屋で夕食を食べると、道場の二階にある自室に籠もってしまう。
 元々二世帯住宅の別棟としてあちらを建てており、キッチンも水回りも全て揃っているからだ。
 母がいない間は、本人が料理をしないので、食事だけこちらで一緒に取る。

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