とあるレンジャーの休日
薬に頼るようになったら、おしまいだ。
精鋭部隊として前線には、まず出られない。
彼らは3日くらい眠らずに活動できる体力と気力があると言われているけれど。
そこで活躍したければ、精神的な図太さとタフさがないとやっていけない。
そして自分にはそれがあると、常に周りに証明し続けなくてはならないのだ。
診療所では内科も外科も、下手をすれば目や耳の中まで診ることもある紫乃だが、心療内科は完全に門外漢だった。
(どうしたものか――)
このまま放っておくわけにもいかず、紫乃は後ろ手にドアを閉めると、歩のいる布団に寄っていった。
歩がそれに気付いて再び顔を上げ、すこし驚いた顔をする。
紫乃は、体育座りをしている歩の前に跪くと、そのまま布団の端にゴロンと肘をついて寝転がった。
「は? 紫乃……何してんの?」
「添い寝」
歩は目をまん丸くしながら、「いやいやいや」と呟く。
「マズいでしょ。なんでドア閉めてんの。そもそも、中入ってきちゃダメだって」