とあるレンジャーの休日
紫乃は素早く処方箋に記入しながら、淡々と答えた。
「もう昼だよ、薫子。彼の腕、止血しといて」
「りょーかい!」
まだ洗面台の前で傷口を流していた彼は、横からぴょこんと顔を覗かせた薫子に驚いて、ビクッとしていた。
薫子は27歳らしからぬ見目の可憐さと甘い声、そして明るく優しい話し方で、この駐屯地のアイドル的な存在になっている。
「縫わなくてもいいみたいよ。良かったね」
「そ、そっすか……」
怪我をした彼は、彼女の丸く大きな瞳に見上げられ、顔を真っ赤にしていた。
止血の処置をしている薫子と彼を奥のベッドに座らせて、カーテンを引く。
そのまま、紫乃は次の患者を呼びに行った。
「お待たせ」
待合い廊下に顔を出すと、先程までは一人だった待ち患者が四人に増えていた。
こんなに人が来るのは珍しい。