とあるレンジャーの休日
それを見た歩は、不満げに膨れて見せた。
「俺、本気で言ってんだけど」
「いや、むしろそれがっ……、かわいい、歩」
「はあ?」
どうやら、『かわいい』はお気に召さなかったらしい。
彼はムスッとしたまま手を離すと、クルッと背中を向けてしまった。
「あ。怒ったの? ねえ、歩」
紫乃は腹這いで近付くと、上から彼の顔を覗き込んだ。
すると、どうしたことか――歩は目を閉じて、いつの間にか眠りに落ちていた。
(え? これ、寝てるの?)
驚いた紫乃は慎重に身体を起こし、おそるおそる彼の前に回って、様子を窺ってみる。
だが歩は、本当に眠ってしまったようだ。
しばらく待ってみたが、すうすうと静かな寝息を立て、ピクリとも動かない。
(……なんで?)
やはり、キッカケは不明だった。
とりあえず眠れたのだから、良いと言えば良いのだが。