とあるレンジャーの休日
戦う理由
07
紫乃は、歩が何も言わずに飛び出して行ったドアを見つめ、ポカンとしていた。
(どうしたんだろう……?)
トイレでも我慢していたのかもしれないと思い、彼女はそれ以上深く考えるのを止めた。
さっさと立ち上がって自分の部屋に戻り、着替えをして階下に向かう。
まずは四人分の朝食の支度。
そして診療所を開ける前に、24時間開いているスーパーへ行き、食材の買い出し。
掃除に洗濯。
やることは山ほどあった。
一方、歩はしばらくの間お休みだ。
彼はこちらの駐屯地にいながらも、任務は与えられないという、出張に近い扱いになっている。
彼の上官と塚本の采配により、通常勤務のルーチンからは外されていた。
心身の不調が表沙汰になることで、彼の職歴に余計な傷が付かないよう、配慮されている。
不調の原因が、肉親の事故という特殊な事情であることも、理由の一つだろう。
だが、なによりも――