とあるレンジャーの休日
(それだけ期待が大きいんだ)
それが、彼にとって余計なプレッシャーにならなければ、いいのだけれど。
朝食を作り終えるまでトイレから出てこなかった歩と、廊下で鉢合わせる。
紫乃は「お腹でも壊してるの?」と訊ねた。
すると彼は顔を赤くして酷く狼狽し、「違う!」と叫んで、全力で階段を駆け上がって行った。
その後ろ姿を見送りながら、紫乃は首を傾げて呟く。
「なんか言動がおかしいけど……いい腓腹筋(ひふくきん)してる」
ハーフ丈のジャージから覗く歩の美しいふくらはぎに見惚れて、紫乃は、ほうっと息を吐いた。
あの全体的に恵まれた肉付きは、本人の努力もあるだろうが、元の素質が良いのだ。
運動神経の良さ、負けず嫌いな性格。
丈夫な骨に、柔らかく強靭な腱や靱帯。
様々な要素がうまく重なり合って、あの身体を作り出している。
「塚本も、たまにはいいことするな」
――厄介事しか持ち込まないと思っていたけれど。