とあるレンジャーの休日
緊急性の有無だけ、ざっと確認する。
増えたのは見覚えのある顔が一人。
彼は白癬の処置だから待たせて大丈夫だ。
その次は……
「あれ? 何してるの」
思わずそう、口に出た。
そこに立っていたのは、陸自カラーの迷彩服ではなく夏用制服を着用した見覚えのある男。
肩に付いている階級章には二本の台座に桜紋が一つ――3等陸佐で、第3普通科中隊長の塚本一哉(つかもといちや)である。
「やあ、紫乃ちゃん。久しぶり」
およそ自衛官らしくない色白の甘いマスクに、親しげな口調。
紫乃は彼の頭からつま先までをザッと確認し、しかめっ面をした。
「……今度は何の用」
「やだなぁ、警戒心丸出しだよ」
「あんたが来るとロクなことがない」
さらに、塚本の隣で長椅子に座り、膝の上に肘をついて前屈みになっている制服の男がいる。
三十代前半の塚本より、だいぶ若そうだ。