とあるレンジャーの休日
「じゃあ、いただきます!」
途端に嬉しそうな顔をして、歩はまた勢いよく食べ始める。
紫乃はそれを見ながら、歩の食事の分量を次から倍にしなくては……と認識を改めた。
午前中はいつものんびりしている吾郎に頼んで、歩は稽古をつけてもらいに、道場へ行ってしまった。
紫乃は買い物をするため、自転車に乗って外に出る。
今日は天気が良く、日が出ていてほんのり暖かい。
9月も末になり、夏の暑さはすっかり鳴りを潜めてしまった。
(そろそろインフルの時期だ)
毎年10月に入ると、お年寄りから子どもまで、ワクチンの接種希望者が、診療所へ大量に押し寄せてくる。
年末にかけて在庫が切れないよう調整するのだが、これがなかなかに厄介だ。
ニュースなどで「今年は威力が強い」などと言われると、接種希望者がドッと増える。
反対に在庫を大量に確保したにもかかわらず、思ったほど希望者が来ないこともあり、動きが読めない。
未開封でも一年保たないので、シーズン中にどのくらいワクチンを使い切れるかが、重要な課題なのだ。