とあるレンジャーの休日
ふいに背後から声がして、振り返ると、すっかり汗だくになった歩が不思議そうな顔をして立っていた。
「ああ、ごめんね。布団を干そうと思って入ったんだけど」
「制服を見てたの?」
「うん。バッジね」
歩が隣に来て、しゃがんでいる紫乃の頭上から、徽章を覗き込んだ。
「すごいね、これ。大変だったでしょう」
「んー、でも飛ぶのは単純に好きだから」
紫乃が顔を見上げたら、歩はなぜか眉根を寄せ、自嘲的に笑ってみせた。
「紫乃のほうがよっぽどすげえよ。治す為とはいえ人の身体を切ったり、刺したり。俺、それはダメ」
「え~、でも……」
災害時でも他の有事でも、前線に立つ人間が人の血肉を見ずにいられることは、少ないのではないだろうか――?
そう言ったら、歩は「違う違う」と首を振った。