とあるレンジャーの休日
「……ただの冗談だよ? 本気で子どもだなんて思ってない」
「なら、いいけど」
あっさり下に降ろされ、畳の上に足が着いた。
歩が手を離し、紫乃が顔を上げる。
二人は目を見合わせ、先に紫乃が微笑んだ。
「そんなに嫌だった?」
「嫌だよ。俺、この顔のせいで、よくからかわれるから」
二十代前半にしか見えない歩の、少年の面影を残した綺麗な顔立ち――
「そっか。うん……まあ、顔のせいだけじゃない気もするけどね」
紫乃が含み笑いを浮かべると、歩の顔がまたしかめっ面に変わった。
「どういう意味?」
「いえ。なんでもないです」
首をすくめてベランダに向かう紫乃に、歩はまた噛みつく。
「紫乃!」