とあるレンジャーの休日

「お布団干すから。手伝ってよ、歩」

 紫乃は先にベランダへ出て、手早く洗濯物を干し始めた。

――遊んでいたら、時間がだいぶ過ぎてしまった。
 そろそろ午前中の診療が始まる。

「やっぱ、子ども扱いしてんだろ……」

 ブツブツ文句を言いながらも、歩はシーツを剥がし、布団を抱えて持って来てくれた。
 紫乃は横に避け、布団を干すためのスペースを空ける。

「早くしないと、おじいちゃんに遅いって怒られる」

「なんか紫乃って、母ちゃんみてえ」

 歩の呟きに、彼女は思わず笑ってしまった。

「デカい長男だねえ。よく食べるし」

「あのなあ……」

 紫乃は、隣で文句を言いながら布団を干す歩を見つめ、クスクスと笑った。





 今度は外へ走りに行った歩を見送りつつ、紫乃は診療の支度をした。
 白衣に袖を通し、マスクも着け、念入りな手洗いをする。

< 91 / 317 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop