とあるレンジャーの休日
「お布団干すから。手伝ってよ、歩」
紫乃は先にベランダへ出て、手早く洗濯物を干し始めた。
――遊んでいたら、時間がだいぶ過ぎてしまった。
そろそろ午前中の診療が始まる。
「やっぱ、子ども扱いしてんだろ……」
ブツブツ文句を言いながらも、歩はシーツを剥がし、布団を抱えて持って来てくれた。
紫乃は横に避け、布団を干すためのスペースを空ける。
「早くしないと、おじいちゃんに遅いって怒られる」
「なんか紫乃って、母ちゃんみてえ」
歩の呟きに、彼女は思わず笑ってしまった。
「デカい長男だねえ。よく食べるし」
「あのなあ……」
紫乃は、隣で文句を言いながら布団を干す歩を見つめ、クスクスと笑った。
今度は外へ走りに行った歩を見送りつつ、紫乃は診療の支度をした。
白衣に袖を通し、マスクも着け、念入りな手洗いをする。