とあるレンジャーの休日
首を横に振る薫子に呼ばれて入ってきたのは、左の小指側の中手骨を骨折した中学生の女の子だ。
ソフトボールの試合中に、ボールが変な角度で当たったらしく、ヒビが入っている。
診療所にこの年代の子が来るのは珍しいから、紫乃はすぐに顔を覚えた。
「先生、おはようございます」
「おはよう。待たせてごめんね」
謝ると、彼女は「いいの」と言いながら笑った。
「その分、学校の授業サボれるから」
紫乃はクスッと笑って、目の前の椅子に座るよう促す。
「痛みは取れた?」
「うん。もう大丈夫だと思うんだけど」
「それは確認してみないとね」
紫乃は薫子に目配せして、彼女の手に巻かれた包帯とギプスを外すよう指示した。
「レントゲン撮ろうか」
「ね、先生。どうしたの? 何か良いことでもあった?」
急に彼女がそんなことを言い、紫乃の顔を覗き込んでくる。