とあるレンジャーの休日

 午前中に受付した外科系の患者を一通り診てしまった後は、祖父に任せて自宅に戻る。
 まるで見計らったかのように、ランニングから戻ってきた歩と、玄関で鉢合わせた。

「あれからずっと走ってたの?」

 紫乃が驚いていると、歩は軽い調子で「探検してきた」と答える。
 街中をグルッと見て回り、運動公園を見つけて、トレーニングもしてきたらしい。

 あまりにも汗だくなので、紫乃は彼に水を飲ませて、シャワーを浴びてくるよう言った。
 歩は、素直に頷きながら、午後の予定を訊いてくる。

「夕方まではヒマだよ」

 駐屯地のバイトは隔日で、今日は特に用事もなかった。

「じゃあ、一緒に出かけようぜ。俺、本屋に行きたい」

「本屋?」

 意外な誘いに目を丸くしつつも、紫乃は頷いた。

「いいよ。お昼ごはん食べたら、出かけようか」

「うしっ! 風呂行ってくる」

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