とあるレンジャーの休日

09

 
 紫乃は、歩と二人、ぶらりと歩いて近所にある本屋へ向かった。
 考えてみると、こうして誰かとどこかへ出かけること自体が、とても久しぶりである。

(家とスーパーと駐屯地を往復するだけだもんね)

 紫乃は基本、常にやるべき事に追われていて、余暇を楽しむという発想がない。
 これは、大学病院で働いていた頃からそうだった。

 同僚の中には、わずかな時間を見つけては趣味や遊びに興じる者も多くいたが、紫乃にはそんな気力も体力もなかった。
 元々身体が弱く、小さな頃から風邪ばかり引いていたので、体調管理を優先する癖がついている。
 飲み会よりは睡眠。
 外へ遊びに出るよりは、部屋に籠もって本を読むほうを好んだ。

 そんな彼女を、周囲の人たちは『真面目』『堅い』と言う。
 お金を使いたがらないので、『ケチ』とか『がめつい』なんて言う者もいた。
 紫乃自身は、なんと言われようが大して気にもせず、聞き流していたけれど。





 半歩先を歩いていた彼が、振り返って言った。

「なあ、紫乃。最後にデートしたのって、いつ?」

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