とあるレンジャーの休日
「デート?」
いきなり、何を言い出すのか――紫乃は怪訝な表情を浮かべて、歩の顔を見上げる。
彼は何げなさを装いながら、こう問いかけてきた。
「彼氏は、いないんだろ」
「なぜ決めつける」
問い返すと、歩はギョッとして、目を見開いた。
「いるの?」
「いないけどさ」
紫乃の返答に、彼はなぜかホッとしたように肩を落とした。
それが紫乃の心に微かな引っかかりをもたらしたけれど、あえて気付かない振りをする。
「歩は、どんな本読むの?」
彼女は強引に話題を変えた。
だが彼も深追いはしてこない。
「色々だけど、好きなのは歴史小説かな。紫乃は?」
「私も色々。最近は、警察もののサスペンスにハマってる」