シークレット・サマー ~この世界に君がいるから~
「ありがとう」
航が大根サラダに辛子と蜂蜜をかけながら言った。
「幸せな夢でも見た?」
「夢……見たのかな……」
そうかもしれない。
夢を見るように、八年前の夏を過ごした。合宿の初日と二日目、みんなと一緒に学校で寝起きして、朝から晩まで音楽に囲まれた時間。
夕日に照らされた前庭で、トライクロマティックという名前を三人につけた。
楽器のできないわたしも仲間に入れた気がして嬉しかった。
四人で見上げた空の色を、まぶたの裏に再現する。
遠い夏とは思えないほど鮮やかな夕焼け。自分の腕に触れれば、赤く染まった肌がほてっている錯覚まで感じられる。
さっきまであんなに鳴いていた蝉。でも実際には、一匹残らず死んでしまった後だろう。八年経てば、次の世代の蝉が地上に出てくる頃だ。
十四歳だったみんながビールを飲んでいる。自分の目の前にも飲みかけのコップがある。
なんだか信じられない。
濃密な二日間だったせいか、中学生としての感覚が抜けきれないのかもしれない。
航が大根サラダに辛子と蜂蜜をかけながら言った。
「幸せな夢でも見た?」
「夢……見たのかな……」
そうかもしれない。
夢を見るように、八年前の夏を過ごした。合宿の初日と二日目、みんなと一緒に学校で寝起きして、朝から晩まで音楽に囲まれた時間。
夕日に照らされた前庭で、トライクロマティックという名前を三人につけた。
楽器のできないわたしも仲間に入れた気がして嬉しかった。
四人で見上げた空の色を、まぶたの裏に再現する。
遠い夏とは思えないほど鮮やかな夕焼け。自分の腕に触れれば、赤く染まった肌がほてっている錯覚まで感じられる。
さっきまであんなに鳴いていた蝉。でも実際には、一匹残らず死んでしまった後だろう。八年経てば、次の世代の蝉が地上に出てくる頃だ。
十四歳だったみんながビールを飲んでいる。自分の目の前にも飲みかけのコップがある。
なんだか信じられない。
濃密な二日間だったせいか、中学生としての感覚が抜けきれないのかもしれない。