シークレット・サマー ~この世界に君がいるから~
 そこには、解散宣言があった。もう何度も目にした、そっけないメッセージ。
 浮かれた気持ちが急速に冷えてゆく。
 やっぱり解散するんだ。避けられない運命なんだ。
 別のルートを通っても、同じところに辿りついてしまうなんて、まるで呪われた迷路のよう。出口なんてないのかもしれない。
 落胆した。
 そのとき、わたしの目は、別の文字に吸い寄せられた。

「……これって」

 サイトには、見たことのなかったライブの告知があった。
 12月31日 TRICHROMATIC 【FINAL】――
 会場は渋谷プラマイZ。
 トライクロマティックが、何度かワンマンライブを行ってきた箱だ。

 現実が書き換わった。
 これまでとは違う未来が動き出している。
 まだあきらめなくていい。誰かがわたしにそう告げていた。
 神様なんて信じていないけれど、ちっぽけな自分を超えた何者かがささやいているのを感じた。
 運命のタイマーを止められるかもしれない。
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