シークレット・サマー ~この世界に君がいるから~
「ねえ、二人は同じ時間を繰り返したことある……?」
「どういうこと?」

 航と亜依が眉根を寄せる。

「何度も過去に戻るの。夢みたいなんだけど、現実っぽくて、暑いとか痛いとかおいしいとか、そういう感覚もちゃんとある。でも過去をやり直しながら、自分ではこれが過去だってわかってるの」
「タイムトラベル? SFの話だろ」
「『時をかける少女』だっけ。あと映画でもあったよね、兵士が何度も戦死しては生き返る話」
「はたから見てたらおもしろいけど、実際にはごめんだな」
「ゲームだと思えばいいんじゃない?」
「そうだな。セーブポイントから、何度もやり直すイメージか」

 現実には起こりえない話。航と亜依の意見が一致する。

「本当にループできたら、オール優を取るまで試験やり直してーな」
「同じ問題が出るかどうかが鍵だね」
「そっか、教授が新しい問題を出してくる可能性もあるんだな。そうなると、二回や三回で満点取るのは無理だよな。前の試験の問題用紙は持ち込めないだろうし。すごろくみたいに単純なシナリオを繰り返すわけじゃないってことか」
「うちは瞬間瞬間を完全燃焼してるから、何度も同じことをやる気力はないや。そんな目に遭ったら、さすがにへばるわ」

 まさにそんな目にわたしは遭っている。
 以前の記憶と二十二歳の意識を保ったまま、同じ夏を繰り返す。
 おとぎ話のような時間のループ。
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