シークレット・サマー ~この世界に君がいるから~
 出会ったばかりでもないのに、どうして今更名乗らなきゃいけないのよ。
 遥人に背を向けると、少しだけ爽快な気分になった。
 こんなわたしでも、遥人の感情を揺さぶることができたなら、気が晴れる。

 午後の残りの時間、三人はそれぞれが別行動し、わたしはがっかりしたまま、夜を迎えた。
 トライクロマティックが誕生する気配はみじんも感じられない。
 他人は自分の思いどおりに動かない。
 そのことを思い知るために、わたしは過去に戻ったのだろうか。
 そうだとしたら、むなしい。

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