シークレット・サマー ~この世界に君がいるから~
バスに乗って学校へ向かう。
途中で、遥人が乗ってきた。大きなスポーツバッグを右肩に、ベースケースを左肩にかけている。
目が合った。
全く表情を変えずに、遥人はわたしの隣に来る。この頃から身長、高かったんだなあ。わたしと二十センチくらい差がある。自分との違いを意識すればするほど、近づきたいとも思うし、近づいたらいけないとも思う。
「おはよう」
挨拶をすると、
「早いな」
短く答える。
その後は沈黙が続いた。
避けられてはいないのだし、気まずい感じではなかったから、わたしも黙っていた。
でもこのひと、わたしの名前も憶えてないんだよね。マラカス屋って思ってるんだよね。
ちゃんと認識してほしいけれど、公共の場で名乗るのも嫌だ。ヒントをあげようかな。
鞄から英語の単語帳を出して、遥人が表紙を見える角度でたっぷり三秒。
カードをめくると、横から話しかけられた。
「追試?」
「違います。見てわからない? この荷物」
「あー、冗談だよ」
途中で、遥人が乗ってきた。大きなスポーツバッグを右肩に、ベースケースを左肩にかけている。
目が合った。
全く表情を変えずに、遥人はわたしの隣に来る。この頃から身長、高かったんだなあ。わたしと二十センチくらい差がある。自分との違いを意識すればするほど、近づきたいとも思うし、近づいたらいけないとも思う。
「おはよう」
挨拶をすると、
「早いな」
短く答える。
その後は沈黙が続いた。
避けられてはいないのだし、気まずい感じではなかったから、わたしも黙っていた。
でもこのひと、わたしの名前も憶えてないんだよね。マラカス屋って思ってるんだよね。
ちゃんと認識してほしいけれど、公共の場で名乗るのも嫌だ。ヒントをあげようかな。
鞄から英語の単語帳を出して、遥人が表紙を見える角度でたっぷり三秒。
カードをめくると、横から話しかけられた。
「追試?」
「違います。見てわからない? この荷物」
「あー、冗談だよ」