ヘタレな貴方と強がりな私


どうぞ、と
湯気が立つコーヒーを差し出してくれた
そんなに込み入った話になるのかと
腕時計で時間を確認する


「あれ、予定とかあります?」


『…娘を迎えに行く時間があって』



私の答えに、また驚いた顔をした
そして私の左手へと視線を移した



『…シングルマザーです』


「そうでしたか。すみません」


なら要件だけ話します、と
宇津木くんは話し出した


『奏は元気にしてますよ。相変わらずお客には人気だし、見かけによらず仕事は真面目』


元気にしていると聞いてホッとした
元気ならそれでいい
それが聞けたら十分だと思ったが
宇津木くんは話しをやめなかった

< 139 / 397 >

この作品をシェア

pagetop