ヘタレな貴方と強がりな私
翌日、母から何度も携帯へ
着信はあったが、出ることはしなかった
拓也に心配をかけたくなく
何事もなかったかのように振る舞った
自分が思った以上に
繊細ではなかったのか
トラウマにはならなく
男に対する恐怖はなかった
だから、自然と忘れられた
あの事は、なかったことにした
だが、母が残した留守電のメッセージ
それが両親に二度と関わりたくないと思った
“どうして逃げたのよ!さっさと柳原さんと離婚して裕介くんの子供、妊娠しなさい”
裕介くんというのは
あのお弟子さんだろう
そのメッセージで
あれは母の差し金だと理解した
母は何としても
伝統を守りたかったのだ