ヘタレな貴方と強がりな私


あっ、


思い出せそうで
思い出せなかった

離婚した当時
自分に余裕がなく
一度だけ、
奈津に当たってしまったことがあった



“おかあさん、ごめんなさい”


奈津は何も悪くないのに謝ってくれて
私にしがみついてきた
奈津には私しかいないのに…
その時の不安な瞳と
小鳥遊くんの瞳が…同じだ


私は小鳥遊くんを見放したりできない
奈津が必要なように
小鳥遊くんも必要なんだ


小鳥遊くんの背中へ腕を回し
小鳥遊くんの胸に顔を埋めた



『…一緒に、いて』


ずっと言いたくて
でも、言えなかった言葉
やっと言えた言葉に
今まで我慢していたものが流れた

でもそれは辛いものではなく
とても幸せなものだ

< 299 / 397 >

この作品をシェア

pagetop