1000年後の世界に
児民館はとてつもなく忙しそうだった。

それはそのはずか。

目の前を多くの人が行ったり来たりしている。

「あ、あの!」

私達の声さえ聞こえない。

やがて1人の女性が足を止めた。

「あなた、マスターを取られてないの?」

取られた?

どういうことだ。

4人全員が首をかしげる。


「あ、はい。町の隅の黒崎の方の丘にいたんです。そしたら友達がマスターがいなくなったと聞いて。」



「あー、そうなのね。細かい事情は説明する時間がないんだけど、友達の3人のマスター3匹は戻ってきたんだよ。何故かは知らないけどね。」


戻ってきた?

「さぁ、とりあえず役長の所へ」

「は、はい!」

コンコン

「役長失礼致します。マスターを取られていない少女と戻ってきたマスター主3人がお見えです。」

ドアをあけると綺麗な黒髪の女性が座っていた。

役長、池田未央子(いけだみおこ)


「ごめんなさいね。散らかってて、そこら辺に座って待っててね。」

10分位だろうか。

待っていると役長は梨沙、悠、柊のマスターを連れて戻ってきた。

「戻ってきたのはこの3匹だけなのよ。」

「え、じゃぁ、他のマスターは戻ってないんですよね?」

梨沙が珍しく自ら質問をした。

「そうなのよ。もちろん私のも。」

「見つけ出す?」

悠がいう。

「え?」

「俺、柊、梨沙、茉莉で皆のマスターを見つける。今はまだ小さいから難しいかもしれないけど、やっぱり見つけ出さなきゃ。」

悠…。全く同じ事を考えてた。

「やろう。俺もやる。」

「わ、私も。やるよ。」

「茉莉は?」

私の答えは決まっていた。

「もちろん!」

けど、やっぱり不安と恐怖がある。

「ダメです。子供に危険な事はさせられないですよ。」

この冷たい声。私はこの人の冷たい声は好きじゃない。

この人の声を初めて聞いたのは3年前の役長選挙の時。

必死でなにかを訴えてたのは知ってる。

それよりも冷たい声が私の耳に残った。

けど今はそんな事で怯えている場合じゃない。

私は身を乗り出して答えた。

「なんで?私は知りたいのよ。この世の中にどうしてマスターが生まれたのか、私達の生活にマスターがいなければならないのか。きっと答えが見つかると思うんだ。」

役長は首を振った。

「あなた達は子供だからまだ教わっていないのですが、この事は触れてはいけないのが法律というものできまっているのです。法律に違反してるということになりますよ」

なにも言えない。

何も言い返せない。

今の日本は法律に違反しただけで死刑だ。

子供はまだ法律の勉強はしていないため、大目に見てもらうことが多い。

けど思いっきり役長の前で話してしまった私はどうなるのか。

考えただけでゾッとする。

「でも、こればかりはしょうがない、大人が全力であなた達を援護します。」

4人の顔がぱぁと明るくなった。

「さっそく準備を」

役長が指示を出す。

この時は特に何も感じなかったが余りにも軽率な行動に出ていた。

けどもう引き返すということは出来なかった。

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