空色プレリュード
「絶対にそうだよ。‥おっと、もうこんな時間だ。戻ろうか。」

「う‥うん!」

二人は片付け始めた。

すると花音はふと疑問に思ったことを尋ねた。

「そういえば、さっきどうして保健室にいたの?」

片付けをしていた笹川くんの動きが止まった。

「それにあの時、教室を飛び出していったし‥何かあったの?」

「ただ‥気分が悪くなっただけだよ。」

笹川くんの顔から笑顔が消えた。

「そっか‥。最近、体調崩しやすいから気をつけないとだね。」

花音は笑顔で笹川くんを見た。

「‥俺のはそんなんじゃないよ、橋村。」

「えっ!ど‥どういうこと?も‥もしかして重い病気とか?」

花音は心配になった。

「そういうわけでもないんだ。‥なんていうか‥その‥。」

そこまで言った時だった。

キーンコーンカーンコーン

「や‥やべっ!!予鈴だ!橋村行こう!」

慌ただしく笹川くんは出ていこうとした。

「う‥うん!!」

花音が音楽室を出た時だった。笹川くんが私の唇に人差し指を当てて言った。

「橋村さん。俺がここでお昼食べてたこと二人だけの秘密ね。」

いたずらぽく言う笹川くんに私はドキッとしてしまった。

二人だけの秘密ができてしまいました‥。











新しい友達

教室に戻ると笹川くんの近くには人が集まってきた。

「どうしたんだよ、千明!昼休み戻ってこなかったから心配したんだぞ!」

「私が変なこと言ったんだよね?ごめんね。」

笹川くんが苦笑しながらみんなをなだめた。

「お前ら心配しすぎだって!ちょっと気分が悪くなっただけで保健室にいたんだから。それに誰も俺を怒らすようなこと言ってないし、気にするなって!」

そう笹川くんが言うと和やかな空気が流れた。

それと同時に先生が教室に入ってきた。

やっぱり笹川くんはすごいなぁと思ってしまう私だった。





その日の放課後、私はピアノ教室に向かった。

「こんにちは、凛子先生!」


「花音!いらっしゃい!」

中から30代の若い女性が出てきた。

名前は元井凛子。花音のピアノの先生だ。

凛子先生は優しくて面白いがレッスンは厳しい。




「花音!ここはしっかりリズムを刻む!」

「はい!」

レッスンは一時間にも及ぶ。



「ありがとうございました!」

終わる頃には私はいつもへとへとになる。

「お疲れさま。‥ねぇ、花音。花音は卒業後、どうするか考えてるの?」


突然の質問だった。

「いいえ、まだ考えてないです。」



「海外留学とか‥してみない?」


「えっ!?海外留学?」


いきなりのことですぐには考えることができなかった。


「花音の実力ならできると思うの。ちょっと考えておいてくれないかな?」

「は‥はい。わかりました。」




私はそう言ってピアノ教室をあとにした。



留学か‥。‥もう‥そんなことを考えなくてはいけない時期なのかな?
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