空色プレリュード
私はピアノをひいて家に帰った。

私の家は学校から徒歩15分のところにある一戸建ての家である。

「ただいまー。」

私は声をかけて家に入るがもちろん返してくれる人はいない。

なぜなら私の両親は音楽家で海外を飛び回ってるからだ。両親と一緒にいることが少ない。食費などはいつも仕送りしてくれてる。バイトとかは基本、やらしてくれない。音楽家になるのに手を怪我させるわけにはいかないという両親なりの配慮だ。



お腹減ったなー。今日の夕食どうしようかな‥

‥と思ってリビングに入ると、留守電が入ってることに気づいた。

私は再生ボタンを押した。


「ハロー!花音!元気にしてる?お母さんだよ!」



「もう‥お母さんたら。テンション高すぎだよ‥。」

娘ながら少し呆れてしまう。でも懐かしい気分にもなる。


「花音、ちゃんとご飯食べてる?それに勉強もしてるの?ちゃんとご飯食べることと勉強はやっておきなさいね。‥お母さんとお父さんは今、フランスにいます!そこで、演奏しているんだよ!花音も早く私達と一緒に演奏しましょう!」


「お母さん、気が早いよ。」

もう笑わずにはいられなくなってしまった。


「それと花音にいい話があるんだけどね、フランスに留学しないかしら?」



「えっ!?」

私の思考が停止する。



「花音、ピアノを頑張ってるから少しでも夢に近づけるように留学した方がいいかなと思って。そしたら夢には格段に近づくわよ。‥また考えておいて。じゃあ、またね花音!体に気をつけてね!」



そう言って留守電は切れた。

私はその場所から動けなかった。

「‥留学‥?私が?フランス?」

ふと千明くんや樹生くん、結ちゃんの顔が浮かんだ。


「‥‥今はいいや。ピアノは日本でもできるから。わざわざ外国へ行く必要なんてない。」

そもそも私は将来、ピアニストになりたいのか、それとも両親と一緒に世界を飛び回りたいのかも‥分かんない。

私は考えないことにした。


「まぁ、いいや!ご飯作ろう!」

そう言って私は料理を作り始めた。

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