泣かないで、楓
「恭平、今年いくつや?」
「えっ、20、だけど」
「20歳にもなって、一人で起きる事も出来ひんの?」

 楓は首をひねり、頬(ほほ)をぷっくりと膨らませた。

「ああ、それ、ジャミーラ帝国の親玉にも言われたよ」
「はぁ?」

 いかん、それは夢の中の話だった。

「それよりアンタ、そのひどい頭を直してき。まるで鳥の巣や」

 楓は僕の頭を指差し、不機嫌そうな表情を浮かべた。

「いいよ。誰も気にしやしないから」
「そう言う事やない。社会人がそんな頭で仕事場に来て、恥ずかしくないん?」
「はぁ……」

 僕は楓にうながされ、しぶしぶ洗面所へと向かった。
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