泣かないで、楓
『おい。そこのお前。テレビを観ているお前だよ』
「え?」

 テレビの中の親玉は、僕に向かってビシィ、と指を指してきた。

『東山恭平。お前は、一体何の為に闘っているんだ?』
「え? え!?」

 突然の事に、僕は激しくまばたきをした。

『金か? 金の為か?』
「ちょっ、こ、これ何!?」

 心臓に熱湯を流し込まれたかの様に、胸の鼓動はバクバクしてきた。

『残念ながら、お前はヒーロー失格だ。何故なら……』
「な、何?」

 僕は膝(ひざ)をギュッと握り、テレビの声に耳をすます。
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