君が涙を忘れる日まで。


 *

朝は苦手だ。どんなに早く寝ても、寝起きは最高に悪い。

けどそんな俺が、いつもより三十分早く家を出て学校に向かっていた。


学校までは自転車で三十分。

坂道もあるけど、朝から人の多い電車に揺られるなんて考えられないから、俺は自転車通学を選んだ。


運動部の朝練は七時半から始まって八時十五分までには教室に戻る決まりになっている。

自由参加だけど、朝のたった三十分やそこらの練習の為に早起きして来るやつはほとんどいない。

最初は俺もそういう考えだったが、どうやら完全に修司に感化されてしまったらしい。


楽しいというだけでなく、いつの間にかもっと上手くなりたいという気持ちが芽生えてしまっていたから。


部活中は効率の悪い練習方法のせいで、一年はゴールを使った練習がほとんどできない。

だから朝練は人がいないし、シュート練習をするには丁度いいってわけだ。



自転車で川沿いの道を走り、橋を渡って学校を目指した。

あたり前だけど、歩いている生徒は今のところ見かけていない。


ちなみに入学してから三週間が経過したが、朝練は今日で五回目。

着替えている時間がもったいないということにようやく気付いた俺は今日、ジャージで登校している。

それも自転車通学だから出来ることだ。

さすがの俺でもジャージで電車に乗るのは抵抗があるからな。



学校に着くと、そのまま体育館へ向かった。

ま、今日もこの広い体育館は俺一人のものだろう。

そう思って体育館に入ると案の定、中はシーンと静まり返っていた。


「さてと」


荷物を置いてバッシュを履いた俺は、とりあえず色んなパターンのドリブルシュートを始めた。



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