君が涙を忘れる日まで。
文化祭の準備にもどこか身が入らない。

お化け屋敷って、お化けになって人を驚かせてる場合じゃないってのに。


『幸野君って驚かすの絶対上手だよね!こういうくだらないことやらせたら幸野君以外合う人いないよ~』

馬鹿にしてんのか褒めてんのか、どっちかにしろよ。


こういうお祭り事は好きだし、やるなら全力でやりたいと思うけど、いつから俺はこうなっちゃったんだろうか。


モテ期のピークは小学生の時だったな。

中学の時もそこそこモテていた。だけど路線変更するキッカケになったあの出来事は、今でも忘れない。


中一の時、クラスで一番可愛いと男子の中で噂になっていた女子が、俺に告白をしてきた。


でもまだ中一だった俺は、その場でふざけておちゃらけて、彼女の告白を無かったことにしてしまったんだ。


恥かしかったから。好きかもって思ったけど、告白なんて現実味のないことをされても対応しきれなかった。


あの時見た彼女の泣き顔は、今でも忘れない。


その日を境に、俺はお調子者のうるさいだけの男子になった。


高校生になったら少しは大人になれるかと思ったけど、そう上手くはいかないな。

今時のお洒落男子が羨ましいとは思わないけど、好きな子に話しかけられるくらいの勇気は持ち合わせておきたかった。



「貴斗、そろそろ片付けようぜ」

お化け屋敷の装飾の準備をしていると、クラスの文化委員が声をかけてきた。


「おう、了解」


当日俺はお化け役。樋口は来るんだろうか?

クラスの準備が忙しそうだし、お化け屋敷なんかに入る余裕はないか。

まぁ来たとしても、長い髪のカツラを被って血まみれの俺になんか、気付かないだろうな。




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