君が涙を忘れる日まで。
「貴斗~、終わったか?」

名前を呼ばれ教室の入口を見ると、修司が立っていた。

相変わらずイケメンで人当たりの良い修司が来ただけで、俺のクラスの女子の空気が変わる。

自分がモテているという自覚はあるんだろうか?多分ないだろう。


「もう終わるけど」

画用紙をまとめて段ボールにしまい、修司に近づいた。


「帰る?」

「ん?ああ、片付け全部終わったら帰るけど」

「じゃー一緒に百均行かねぇ?」

ラッキーロードの百均か?


「なんで?」


「これから樋口と一緒に行くから、貴斗もどうかな?と思って」



・・・・・・。

やっぱり、修司は鈍感だ。



「貴斗?どうした?」

「いや、俺はいいや。昨日買った漫画読みたいし」

「そっか、んじゃまた明日部活で」

「おう、じゃーな」


修司が去った後、もう一度教室から廊下を覗いた。


修司のうしろを追うように、隣のクラスから出てきた樋口。


その横顔は、嬉しそうに笑っていた。


部活をやってる時も、あいつの側にいる時も、樋口はいい顔で笑う。


どんな会話をしているのかは分からないけど、その楽しそうな笑顔を見ているだけで樋口の気持が伝わってきて、少しだけ胸が痛む。


でも、あいつが笑ってるならそれでいい。


明日明後日も、あの笑顔が見られれば。







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