君が涙を忘れる日まで。
学校を出た俺は、歩きの修司に合わせるように自転車を押しながら駅に向かった。


「貴斗が一緒に帰ろうなんて珍しいし、なんか気持ち悪いな~」

そう言って笑っている修司。

俺は自転車だから、部活が終って誰かと一緒に帰るなんて経験は一度もない。


「ああ、ちょっと聞きたいことがあって」


相手が樋口ならこうはいかないが、修司だったら遠慮なく聞ける。

というか、聞かなきゃ気になって絶対寝れなくなる。


「聞きたいことって?」

「あのさー、修司って……好きな奴いんの?」


あまりにも意外な質問だったのか、修司は口を開けたまま目を丸くしている。


「……は?なんだよ突然」

まぁそうなるよな。今まで恋愛トークなんてしたことない俺が、急にそんな質問をしたら修司も答えにくいだろう。


「いるけど」

「……えっ?」

即答だった。質問したのは俺なのに、驚いて足が止まる。

「好きな子だろ?いるよ」

誰なんだって聞いていいのか?

だけど俺が聞く前に、修司は自ら白状した。


「俺、浅木が好きなんだ」


修司が……浅木を。


樋口が両想いだったら俺はなにもせずに失恋ってことになるわけだから、辛い。

でも修司の答えは、それよりももっと辛い結果だった。


樋口の気持を考えたら、辛くて辛くて。

あいつが泣いているところを想像したら、俺も泣きそうになった。


だけど修司は良い奴だ。その修司が好きになった浅木も、きっと良い奴なんだろう。

でも……樋口は……。



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