君が涙を忘れる日まで。
俺に気付かないまま、教室を飛び出していった樋口。


誰もいなくなった教室に入り、俺は黒板の前に立った。


薄っすらと残る文字を見た時、胸の奥から悲しみがこみ上げてきたけど、俺は必死にそれを堪えた。


歯を喰いしばり、拳を握りしめる。



修司と話している時の、嬉しそうな樋口の表情が浮かんだ。


その辺の格好ばっか気にするような奴より、相手が修司なら樋口も幸せになれるって、そう思ってた。

なのに、修司が選んだ相手は樋口じゃなかった。


誰にも文句なんて言えないし、誰が悪いわけでもない。


俺が修司を大事な友達だと思うように、樋口にとっての浅木も、きっと大切な友達なんだろう。


友達が幸せなら、それで自分も嬉しいと思えるなら、俺はそれでもいいと思ってる。


でも……。



ここに書かれた気持ちが樋口の本心だったのなら……。







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