君が涙を忘れる日まで。

  *


部活が終ると、修司は浅木と一緒に帰って行った。

少し遅れて部室を出ると、体育館からはまだボールの音が聞こえてくる。

女子はまだか。男子はトレーニングだけだったしな。


体育館に背を向け学校を出た俺は、橋を渡ってラッキーロードに向かった。

帰ったらご飯があるけど、今無性にたこ焼きを食いたい気分だった。


ラッキーロードのたこ焼きは、外はカリカリ中はふんわりで、タコがでかくてとにかく美味しい。

ここでエネルギーチャージして、帰りの坂道頑張るか。


夕方のラッキーロードは、買い物袋を下げたおばさんや学校帰りの学生などで賑わっている。


お目当ての場所に着くと、その店の前で何度も瞬きをした。

「は?なんで休みなんだよ!」

思わず独り言を言ってしまったが、腕を組みながらシャッターに貼られた紙を見つめる。

今日から三日間休み?なんだよ、もう俺の脳内たこ焼きで完成されてたのに……。


仕方なく隣の本屋に寄った後、トボトボと歩きながら自転車を押して商店街を抜けた。


樋口ももう、部活終わっただろうな。

自転車にまたがり駅の方面に向かった。


夕日はいつまでも俺を追いかけてくる。

いつか……このオレンジ色の光の下で、樋口と一緒に歩けたら。



駅前の信号が見えてくると、青になるのを待っている沢山のうしろ姿から、同じ学校の制服を着て俯いている女子を見つけた。

樋口だ……。


信号が青になると、肩の下まで伸びた黒髪を揺らしながら歩き出す。


だけど、異変はすぐに訪れた。



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