君が涙を忘れる日まで。
横断歩道の真ん中で、急に立ち止まった樋口。
信号の前で立っている俺は、自転車のハンドルを握る手に自然と力が入った。
なんで渡らないんだよ。
そう思った時、駅前を歩く修司と浅木の姿が見えた。
渡らないんじゃない、渡れないんだ。
さっきよりもさらに力を込めてハンドルを握ると、青信号が点滅し始めた。
そして……樋口は振り返り、走り出す。
でもその時、俺の視界には一台の車が見えていた。
左折しようとしている車は、樋口に気付いていない……。
「危ない!!」
自転車を放り投げ、何も考えずに……走った。