君が涙を忘れる日まで。
少しの沈黙の後、私は布団の中で自分の両手を握った。


ーー明日を、迎えられるように。



「あのね、修司……」


私の言葉に顔を上げた修司は、香乃と同じその大きな目を私に向けた。


「私、修司のことが……好きだった。電車で修司を見かけるようになってから、ずっと……」


ずっと、あなたを見てた。

だけどあなたが見ていたのは、私の幼馴染。


「香乃と付き合ってるって気付いてからも好きな気持ちは消せなくて、嘘ついて笑って……でも本当は、ずっと苦しかった」


「奈々……」


「でもこのままじゃダメなんだって教えてくれて……気付いたから、だから……」


「奈々、俺は……香乃のことが好きなんだ」


目を逸らさず、そう言って唇を噛み締めた修司。


分かってるよ。

凄く胸が苦しくて、涙が溢れてしまうけど……でもやっと、やっと言えた。


心の中に溜まった影が、少しずつ消えていく気がして……。

気付いた時には、自然と笑っていた。


修司に向かって、微笑んでいる自分がいたんだ。



ねぇ幸野君。私、ちゃんと飛べたよね……。




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