君が涙を忘れる日まで。
*三週間後*
「奈々、帰らないの?」
「ごめん!先帰ってて!」
「じゃー夜家に行くから勉強するよ!?」
「了解!じゃーね」
急いで教科書を鞄にしまった私は、香乃にそう言って足早に教室を出た。
向かった先は体育館。
今日から部活は試験休みに入るけど、ちょっとだけなら問題ないはず。
鞄を置いてボールを持ち、制服のままゴールの前に立った。
百六十センチという身長は、バスケをするには不利だ。
だから私は、スリーポイントを極めたい。
半円を描いている白い線から全身を使ってボールを放つと、弧を描いたボールはそのまま音を立てずにネットに吸い込まれた。
よし、今日もいい感じ。
「こら!なにやってんだ!」
「ハッ、すいませ……」
ヤバい。一瞬そう思ったけど、聞こえてきたその声に、ホッと胸を撫で下ろす。
「脅かさないでよ」
口を尖らせた私をみて、あいつはクスッと笑った。
「ひとりだけコソコソ練習するなんてずるくないか?俺だってやりたいのに」
「あっ、ごめん。でももう少しずつなら動かしていいんでしょ?」
「冗談だよ。もう全然大丈夫」
私が俯きながらそう言うと、体育館に入ってきて私からボールを取った。