君が涙を忘れる日まで。
私の少し後に目を覚ました幸野君は、事故のあと頭を切ったため即手術になったけれど、出血のみで異常はなかった。


その代わり、左腕の骨折と肋骨にヒビが入ってしまったため、昨日ようやく退院することができた。



「左腕だし、あと一ヶ月もすれば完全復活できるってよ」

「本当に?よかった……って幸野君?なにしてんの?」


焦る私をよそに、幸野君はボールを高く上げ、そのままシュートをした。


「ちょっと!なにやってんのよ!バスケはまだ早いでしょ!?」

「大丈夫だよ。〝左手は添えるだけ〟って、常識だろ?」


意味が分からないといった表情で幸野君を見つめていると、驚いたようにポカンと口を開いた。


「は?まさかお前も知らないのか?」

「なにが?」

「あの超有名なバスケ漫画だよ!」

私が首を傾げると、幸野君は溜め息をついてボールを私に渡し、鞄を持ち上げた。


「バスケ好きなら読むべきだろ!よし、貸してやるから帰るぞ」

「え?今から?」

「そうだよ。お前ん家届けるから、とりあえず全巻読め」

そう言って体育館を出て行った幸野君。


「ちょ、ちょっと待ってよ」


私も急いで鞄を持ち体育館を出ると、幸野君は入口のすぐ横で待っててくれていた。




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