君が涙を忘れる日まで。
 
 *

「部活っていつまで?」

ホームルームが終わったところで、鞄を持ち上げながらアユミが聞いてきた。


「来週の火曜までだよ」

「そっかー、毎日練習とかマジ凄いよね。頑張ってね」

「うん、じゃーね」


うちの学校では、テストの一週間前から部活動は停止になる。

正直勉強もやるから部活もやらせてほしいけど、そういうわけにもいかない。


中学からバスケを初めて、すっかりバスケの楽しさにはまってしまった私は、高校でも当然ながらバスケ部に入部した。


この高校は強いというわけじゃないけど、勝ちたいという意識の高い先輩達や、ちょっと怖い顧問の先生も私にはいい刺激になる。

次の大会、まだ私は出れないと思うけど、勝ちたいな。


ジャージに着替え、入学祝いに買ってもらったお気に入りの赤いバッシュを手に持ち、体育館へ向かった。


一年生はまだ部室を使えないから、鞄は体育館の隅に置く決まりになっている。

鞄を下す前に一度スマホを確認すると、香乃からLINEが入っていた。


[部活頑張ってねー。ていうか私風邪引いたかも。鼻水とまんないよー]


風邪か、そういえばここ一年は引いてないかも。

そう思いながらスマホをしまい、まだ誰も来ていない体育館でバッシュを履いていた。


今日はバレー部が体育館の半面を使う日で、もう半面を男子と女子のバスケ部が半分ずつ使うことになる。



「あれ?まだ一人?」


突然聞こえてきた声に驚いて顔を上げると、白いTシャツにジャージ姿の園田君が立っていた。


「あ、うん。私急いで来たから」


園田君が同じバスケ部だということも、もう随分前から知っていた。

でもこうして体育館で言葉を交わすのは、これが初めてだ。

もしかしたら今朝の挨拶をきっかけに仲良くなれるかもしれない。そんな期待が膨らむ。


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