君が涙を忘れる日まで。
座っている私の横に立ち、壁に寄り掛かっている園田君。


「そういえばさ、文化委員、宜しくね」

「うん、宜しく……」

社交的な性格のはずなのに、園田君が相手だとどうしても駄目だ。緊張して、言葉が途切れちゃう。


「樋口って、中学でもバスケ部だったんでしょ?」

「うん、そうだよ」

「やっぱな。どうりで上手いと思った」


それは、バスケをしている私を一瞬でも見てくれていたということなんだろうか。


「園田君は?中学の時もやってたの?」

「いや、俺は高校からなんだ。中学の頃は陸上部だったから」

「そうなんだ」


バッシュを履き終え立ち上がると、園田君は持っていたボールを私に渡した。


「え?」

「ちょっとシュートしてみて」


突然の申し出に一瞬戸惑ったけど、園田君の要望に応える為、私はフリースローの線まで下がった。

そして胸よりも少し高い位置でボールを構え、そのまま斜め上に真っ直ぐ腕を伸ばしてボールを放つ。

ボールはリングに当たることなく、シュッという音を鳴らしながらネットを揺らした。

この音が聞けると、私のテンションも自然と上がる。


「綺麗なシュートだな」

「あ、ありがとう。ていうか見られてると緊張する」


< 14 / 130 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop