君が涙を忘れる日まで。
駅を出ると、全てを吸い込んでしまいそうな澄みきった青空が広がっていた。

風が流れて太陽が昇り、徐々にみんなが動き出す時間が訪れる。


「こっちでいいんだろ?」


幸野君は学校に向かう道路を指さし、私は頷いた。


川沿いの道といえば、昔の某学園ドラマのような土手を想像するけど、ここはそんなんじゃない。

三、四メートルくらいの幅の川が流れているいたって普通の道路だ。でも川沿いというのは間違っていない。


五分程歩いた所にある小さな橋を反対側に渉るのがいつもの通学路だけど、私はそこで立ち止まった。


「どうした?」

「こっち、行っていい?」

橋とは反対側に体を向ける。


「俺は樋口について行くだけだから別にいいけど。こっちってラッキーロードの方?」

「うん」


ラッキーロード。なんだかとても賑やかでパレードでも始まりそうなネーミングだけど、少し大き目の商店街といった感じ。勿論パレードなんて行われない。

一応途中まで屋根が付いていて、距離も結構長い。


「ずっと気になってたんだけどさ、ラッキーロードの屋根付いてる所と屋根無しの所じゃ家賃とか全然違うのかな」

「そんなことずっと気になってたの?幸野君て面白い」

「だってさ、商店街に行く側の立場としたら、雨降ってる日は屋根の下だけで買い物済ませたいって思うじゃん。そうなったら屋根なしの所にある店は不憫だなって」

「そうだね。多分全然違うんじゃない?」


幸野君と話していると、なんだか学校帰りにただ寄り道をしているだけのような気分になる。

良い意味で軽くて緊張感がなくて、肩の力が抜けるから、今の私には丁度いい。




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