君が涙を忘れる日まで。
「お母さん!さっき電話したやつ!」

「はいはい、そこに置いといたわよ。あとさっきユリさんも持って来てくれ……」

「ありがとう!じゃー行ってくる!」


お母さんの話しを最後まで聞かず、コンロが二個に分けて入れられている袋を両手に持って家を出た。

ユリさんというのは香乃のお母さんのことだ。全部終わったらちゃんとお礼を言わなきゃ。


再び走り出すけど、コンロ分の負担は想像以上に私の腕に圧し掛かってきた。


「なんでこんなに重いんだよ」

でも走る足を止めるわけにはいかない。


時間を確認する暇はないから分からないけど、修司との電話を切ってから家に戻り、学校に着くまでの時間は多分、トータルで一時間半くらい。

ギリギリだ。頑張れば二十分は縮められる。

今がオリンピックのマラソン本番だと思って頑張ろう。


きっと作り置きしたポップコーンを売ることになっても、みんなは何も言わなかったと思う。

でも、それじゃ喫茶店方式にした意味がなくなる。

私は日本代表、みんなの『美味しい』という笑顔を背負ってるんだ。


電車に乗り込んですぐ、修司にLINEを送る。


[今電車に乗った。大丈夫?]


[こっちは大丈夫だから、無理してダッシュとかするなよ]



駅を降り、また走り始めた。周りの景色なんて一切目に入らない。

両腕が痺れるほど痛くても、最後まで必死に走った。


学校が見えてきて、校庭にはもうすでに沢山のお店が開催の時間を今か今かと待っている。

急いで下駄箱に着くと、そこには修司とタクヤ君が立っていた。



< 30 / 130 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop