君が涙を忘れる日まで。
「ご、ごめん。ハァハァ……遅くなって、私」

「謝るなよ、じゅうぶん間に合ってる。タクヤ、とりあえずこれ教室に持って行ってくれるか?」

「了解!」


タクヤ君は私から袋を受け取って、そのまま教室に向かった。


呼吸がまだ上手く整わない。部活中でもこんなに息を切らしたことなんてないのに、今になって腕の痛みを感じてきた私はその場に崩れるようにして座った。


「奈々、大丈夫か?ほら」


頭の上にフワッと柔らかい物が乗っかって、突然視界が遮られた。

腕を伸ばして頭に乗ったタオルを手に取る。



「本当に頑張ったな。えらいえらい」


そう言って修司は、私の頭を優しく撫でた。


ねぇ修司……このドキドキは、走った後の動悸なんかじゃないよ。

あなたの手が、あまりにも温かいから……。



頑張ったのはクラスのためにだけど、修司のためでもあった。修司が、最高の笑顔で文化祭を終えられるように。

自分の顔を隠すように、タオルで滴り落ちる汗を拭った。


「立てるか?」

「平気。もう疲れが吹っ飛んだから」


修司が私の腕を掴み、そのまま力を込めて立たせてくれた。


「さすが未来のバスケ部エース。ここからが本番だから、頑張って美味いポップコーン作ろう」

「うん」



クラスに戻ると、昨日の飾りつけを終えた時に見た教室より、もっとずっとカラフルに可愛く仕上がっていた。


「ヤバい。本当にポップでちょー可愛いんだけど」

「ポップコーンだけに?」

「もうそれはいいから」

クスッと笑いながら修司の肩を叩くと、修司も嬉しそうに微笑んだ。



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