君が涙を忘れる日まで。
*
部活が終わって家に帰り、食事とお風呂を済ませた私はベッドに寝転んでスマホを眺めていた。
香乃の告白は、私の想像していたそれとは違っていた。
だから聞いた時は「いいじゃん、じゃー帰りは一緒に帰れるね」と言って男バスの二年のマネージャーの元へ行く香乃を嬉しい気持ちで見送ったけど。
でもどうしてか、今になって心の中がモヤモヤし始めてきた。
ギシっという音を立てて勢いよく起き上がった私は、香乃に電話をしようとスマホを操作していると、逆に香乃から電話がかかってきた。
「香乃?」
『まだ起きてるよね?』
「うん、明日休みだし、部活もないから」
『じゃあさ、今から行っていい?』
「今から?まぁいいけど」
断る理由もないし、私も香乃と話しがしたかったから丁度いい。
電話を切ってから向かいの家に住む香乃がやって来たのは、僅か五分後。
「お邪魔しまーす」
「どうぞー。鍵締めてね」
「はーい」
相手が香乃だからか、お母さんの対応も良い意味で軽い。
階段を上がる足音が聞こえてきて、香乃が部屋に入ってきた。私はベッドに寝転びながら手を振る。
「やっほー……ってか何それ?」
香乃は小さめの旅行バッグを持っていて、部屋に入るなりそれをベッドの前に置いて中身を取り出した。
「明日部活ないし、最近ご無沙汰だなーと思って」
「ご無沙汰って?」
「お泊りに決まってるでしょ?」
家が近すぎていつでも行けるという感覚がそうさせるのか、確かにお互いの家に泊まるということはあまりない。最後に二人でパジャマパーティーをしたのは、多分小学校の卒業式の日だった。