君が涙を忘れる日まで。
手袋を編むと決めてから一ヶ月以上が経過した。


試行錯誤して、何度も失敗してやり直して、それでもなんとか形になった……と思う。


目の前にかざしてみると少し不格好だし、所々毛糸が飛び出してるけど、不器用な私がよくここまでやれたと自分を褒めてやりたくなった。


香乃からLINEで、今夜家に来ると言われた。つまりきっと、香乃も編み終わったということなんだ。


それは、香乃が私に好きな人を打ち明けるということ。

そして、私も香乃に修司への気持を伝える日。



今まで香乃になにかを話すとき、こんなに緊張したことはなかった。

どうしてなのか自分でも分からないけど、中学までは隠しごとなんて出来なくて、早く言いたくて仕方ないという気持ちしかなかったのに。


小六の時にクラスの足の速い男の子を好きになった時も、中二の時に先輩がかっこいいと思った時も、私はそう思った瞬間香乃に話していたから。


だけど高校生になって修司を好きになった私は、どうしても香乃に言えなくて、あくまでも仲の良い友達だという振りをしていた。


でもやっと言える。修司は好きだけど、私にとって香乃も大切な存在。誰にも変えられない大切な幼馴染だから。


香乃に向かって修司を好きだと言っている自分を想像するだけで、緊張で胸が締め付けられる。


ご飯を済ませて香乃がやってくるのは、多分二十時頃だろう。

それまでに気持ちの整理をしておかなきゃ。


というか、香乃に言うだけでもこんなに緊張するのに、修司に告白なんて出来るんだろうか……。


あ~駄目だ。そんなこと想像したら心臓が爆発しそうなくらいドキドキする。

まだ、本番はもう少し先だから、今は考えないようにしよう。


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