君が涙を忘れる日まで。
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校舎と体育館の間は、他の場所よりも強く風が吹きつけてくる。
肌を突き刺すような風なのに、体は痛みを感じない。
代わりに、心は氷のように冷たく感じた。
「たとえ私が香乃に相談していて、香乃より先に告白していたとしても、結果は同じだった。それなら言わないままで良かったって思うの」
幼馴染の恋を応援して、修司とは仲の良い友達のままバスケの話で盛り上がったり、冗談を言い合って。
少し胸は痛むけど、きっと大丈夫。
私が我慢すれば、これまで通りの関係でいられる。
そう……思っていた。
「樋口ってほんと、素直じゃないな。何もなかったかのように振る舞って我慢して、涙を流して、そんなの無理に決まってるだろ」
「幸野君てすごいね。まるで私の心の中が見えるみたい」
「見えるんだよ」
「えっ?」
「バーカ、冗談だよ。樋口の話を辿ってるうちに、俺もお前たちの側にいるような気になってきてさ」
「そっか……」
体育館に背を向け再び校舎に入った私達は、そのまま階段を上がった。
錆び付いた手すり、汚れた壁。
随分古くなった校舎は、来年建て替える予定らしい。
「三年生になったらプレハブか……」
「高校生活最後がプレハブなんて、ある意味貴重だろ」
「うん、まぁ……関係ないけどね」
「……」