君が涙を忘れる日まで。
失恋なんてどうってことない。

ただ少し泣いて、しばらくの間は元気がなくて友達に心配されたり、部活にも身が入らなくなって……。

黙ってても時間は流れてくれるんだから、この思いもいつかはきっと。


私さえ普通にしていればいいんだって思ってた。

でも実際は、幸野君の言う通りだったんだ。


無理にきまってる。



「新学期が始まれば少しはスッキリするのかなって思ったけど、駄目だったんだ」

「そりゃそうだろ。失恋の痛みはよく分かんないけど、そんな簡単なら思い出しただけで泣いたりなんかしねぇよ」


失恋したからじゃないんだ。

多分それは、相手が香乃だったから。

子供の頃からずっと一緒にいた、大切な人だったから。


今さら私の気持を話して、香乃を悩ませたりしたくない。

でもこのまま何事もなかったかのように振る舞えるほど、私はまだ大人じゃなかった。


大好きな二人に一番近い存在の私は、ただ逃げることしか出来なかった。


これ以上傷つかないようにと、目を逸らして……。





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